テイジンの除湿剤を知るまでの私の「黒歴史クローゼット」

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※登場人物は全て仮名です。

私はずっと、自分の部屋を信じすぎていた

「うちのクローゼット、ちょっと独特な香りがする」

そう気づいたのは、同居していた妹に「お姉ちゃんの部屋ってなんかニオう」と言われた日のことだ。

妹の名前は由美子。デリカシーのかけらもないが、鼻だけは犬並みに鋭い。

「気のせいじゃない?」と返したら「気のせいじゃないと思う」と即答された。

その瞬間、私の「うちは大丈夫」という3年間の自信が、音を立てて崩れた。

ちなみに由美子は今、彼氏の部屋に半同棲中で週2回しか帰ってこない。それでも嗅ぎ分けてくるのだから、本当に人間とは思えない。


100均の除湿剤、3年間の信頼関係

話を戻す。

私がクローゼットの湿気対策として信じていたのは、100均の小さい除湿剤だった。

ドラッグストアの棚で見かけるアレ。透明の容器の下に水がたまっていくやつ。

「水がたまったら交換する」という運用ルールを自分に設定して、最初の半年はちゃんと守っていた。

ところが2年目あたりから、確認するのがなんとなく億劫になってくる。

見ない。見たくない。見なければ湿気は存在しない。

完全にクローゼットから目を背けた私は、その代わりにルームフレグランスを買い足した。

いい香りを足せば、悪い匂いは消えると思っていた。

消えない。そういうものじゃない。

事件は1月に起きた

去年の冬、久しぶりに会う友人の美咲とカフェで待ち合わせた。

お気に入りのウールコートを羽織って、気分は完璧だった。

電車のなかで、なぜか周囲がさりげなくスペースを作ってくれた。

「空いてラッキー」と思った。本気で。

カフェに着くと、美咲が私の顔を見る前にコートに視線を落として、少し間を置いてから口を開いた。

「ねえ、そのコート、どこで保管してたの?」

返答しながら、私はゆっくりと悟り始めた。

電車のスペース。

由美子の「なんかニオう」。

ルームフレグランスで誤魔化し続けた2年間。

全部がつながって、走馬灯のように脳内を流れた。

「……クローゼット」

「……そっか」

美咲は優しいひとなので、それ以上は言わなかった。でも目が全部語っていた。

帰宅して初めてちゃんと見た

その日の夜、恐る恐るクローゼットを開けた。

奥の壁の隅に、うっすら黒いシミ。

押し込んでいた布団を引っ張り出すと、触った感触が冷たくてペタッとしている。

除湿剤の容器は、水が蒸発して空っぽになってから時間が経っていた。

置物と化した除湿剤が3つ、静かに並んでいた。

なんなら容器の底が少し汚れていて、それはそれで別の問題だった。

SNSで見つけた「なんで早く知らなかったんだろう」の嵐

その夜、スマホで「クローゼット 湿気 対策」と検索した。

出てきたのが、テイジンの除湿剤だった。

正確には、誰かのSNS投稿だった。

「布団の下に敷いて、湿気を吸ったら干すだけで繰り返し使える」

「クローゼット用、引き出し用、マット型まである」

「使い捨てじゃないからコスパが全然違う」

コメント欄に「なんでもっと早く知らなかったんだろう」が数十件並んでいた。

読みながら、私も同じことを思った。

思うと同時に、少し腹が立った。

なんで誰も教えてくれなかったのか。

由美子、お前が「ニオう」と言う前に「テイジンの除湿剤使ってみたら?」と言ってくれていれば、このドラマは起きなかった。

いや、由美子は除湿剤に詳しくない。責めるのはお門違いだ。

届いた翌日、クローゼットが別物になった

翌朝にはAmazonでポチっていた。

シート型をクローゼットへ。マット型を布団の下へ。引き出し用をタンスのなかへ。

3日後、クローゼットを開けたときの感覚が明らかに違った。

あのモワッとした空気がない。

壁が乾いている。

コートを羽織って深呼吸したら、普通の空気しか入ってこなかった。

普通の空気がこんなに嬉しいと思ったのは、生まれて初めてかもしれない。

干して再生できるので、翌月に捨てる必要もない。100均除湿剤を3ヶ月ごとに買い直していたあのコストと手間が、まるごとなくなった。

ちなみに由美子がその週に帰ってきて、玄関からリビングに入ってきた瞬間「あれ、なんか部屋変わった?」と言った。

「テイジンの除湿剤」とだけ答えたら、意味がわからなかったらしくスルーされた。

あの冬、私が本当に失ったもの

美咲とは先月また会った。

「そういえばあのコート、最近見ないね」と言われた。

捨てた、とは言えなかった。

あのコートはクリーニングに出す前にひとりで処分してしまったから。

思い出ごと処分したかったのかもしれない。

「買い替えた」と答えたら「そっか、似合ってたのにね」と言われた。

美咲は優しいひとだ。本当に。

新しいコートは、クローゼットから取り出すたびにちゃんと普通の匂いがする。

それだけで、毎朝少し気分がいい。

湿気対策なんて、正直どうでもいいと思っていた。

でも「普通」を手に入れるだけで、こんなに気持ちが違う。

道具を変えただけで、毎日の出だしが変わる。

テイジンの除湿剤を知るまでの私は、ずっと間違った道具で戦っていた。

そしてそれに3年間、まったく気づかなかった。

 

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